特許の重要性(4)【後発でも勝つために①特許調査の目的①】

特許の重要性(4)【後発でも勝つために①特許調査の目的①】

ひと月前に特許について、3回記してきました。今回から、少し各論について述べます。

 

後発で新規市場に参入する場合、先行他社の特許調査は不可欠である。後発であることに焦点を当てて、特許調査についての概要を述べる。更に、後発であっても勝てる自社出願について述べる。

 

<後発における特許調査の目的>

後発における特許調査の目的として、主に次の3つが挙げられる。

Ⅰ.先行他社の出願傾向の把握(特許情報の抽出)

Ⅱ.自社(予定の)技術・製品が先行他社の権利侵害調査(侵害予防調査)

Ⅲ.自社(予定の)技術・製品の先行他社登録特許の無効資料調査

調査着手の前に、先ずは、自社の事業計画・製品化の方向性等の明確化が必要である。そうでないと、調査の進捗で抽出される特許に対して、回避可能な(回避すべき)特許であるか、または、実施許諾が必要な特許であるか、更には、無効化すべき特許であるかの判断が困難となるためである。

上記3つについて、以下に述べる。

 

Ⅰ.先行他社の出願傾向の把握(特許情報の抽出)

先行する他社の特定は、営業情報等から、数社程度に絞られるのが通常である。仮に3社が先行他社とすると、各社毎に「出願人」での絞りこみ検索を行った後、「発明名」や「特許分類(IPC分類)」に注目して、関係する製品・技術分野での絞り込み検索を行う。

ここで、「出願人」である会社名の変更(合併や吸収を含む)により抽出されないことがある。旧社名も含めた検索が必要である。

(通常、権利が維持されている登録特許は、特許権者によって名義変更がされるが、権利化されなかった特許は、名義変更はなされない。)

続いて、先行各社における関係製品・技術に関する特許を抽出された後、以下の分析が有効である。

①出願件数の推移

②発明者(数)の推移

③もの・製造方法・製造設備に注目

④課題の推移

⑤各特許の重要度の推測

それぞれについて、以下に述べる。

(1)出願件数の推移

先行他社の1社(A社とする)の年度当たりの出願数の推移を知ることで、開発の着手時期や、出願件数が増加傾向であるのか、それともピークは過ぎて減少傾向であるかによって、A社における該当製品・技術の推進する姿勢を推し量ることができる。また、A社の全出願件数との比較することによって該当製品の社内での重要度も推定でできる。

(2)発明者(数)の推移

発明(公開公報)の内容と、発明者との関連を見ていくと、発明者Pは設計者、発明者Qは材料開発者、発明者Rはプロセス開発者、というような推測が可能となり、それぞれのキーパーソンが誰で、関連する他の発明者が何人いるか、つまり、出願の時期によって、開発の陣容が概ね想像できることが多い。更には、発明者の住所(事業所の住所)によって、研究所に所属している発明者がいるのか、どこに所在する事業所(工場)で開発・製造がなされているか、等も推測ができる。

但し、最近の傾向として、前記のような推測(特定)ができないようにするため、発明者の住所を会社本社の住所に統一する出願人も多くなっているに感じる。

発明者数と前記出願件数の関係に注目することで、単に所属する発明者(技術者)の数が増えて件数が増えているのか、それとも出願の重点化によって、増えているのか等の情報も得られる。

(3)特許の種類

特許は、もの、製造方法、方法、の3種類があるが、最も顕現性が高い(権利範囲の外延が明確、曖昧さが少ない)製品の構成要件による「もの」の特許の出願が優先される傾向がある。

他方、方法特許はその権利範囲が狭いこともあって、出願は少ないと感じる。方法であっても、製造の一工程とすることによって、製造方法特許としての出願がなされることが多い。

製造方法の特許では、(その製造方法によって製造された「もの」も権利範囲に含まれるものであるが、)明細書中に製造条件などを少なくとも、「もの」の特許以上に「実施可能要件」を開示する必要があって、発明が完成した時点で即出願することは少なく、社内での議論によって、出願せずに秘匿することを含めて、出願内容(どこまで開示するか)や出願時期を検討されることが多いのではなかろうか。

つまり、製造方法特許が出願される段階では、後発が先に出願することによって障害となる特許が成立(登録)されることへの対策として適時出願されていると考えるべきであろう。

また、「もの」ではあるが製造装置についても、製造方法と類似の扱いがされることが多い。

従って、特許が「もの」「製造方法」「製造設備」いずれに属してして、その件数や割合の推移を把握することは有用と考えられる。

(4)課題の推移

明細書中に記載されている課題は、設計に関するもの、製造や品質に関するもの、等によって、異なるが、それぞれについて、開発の進捗や、顧客のニーズの変化によって、推移していくものである。

また、先行各社によって、課題の捉え方は異なることが多く、各社の出願の特徴の把握することができる。

(5)各特許の重要度の推測

先行他社の出願特許の内、以下の情報を注目することで、それぞれの特許の重要度を推し量ることができる。

①審査請求時期

審査請求期限は、出願から3年であるが、重要と考える特許、権利化を急ぎたい特許では、出願後、比較的早く審査請求される傾向がある。

②優先権主張による外国特許出願の状況

外国出願は権利化までの費用が多額となり、また、その権利の維持年金も高いため、外国出願される特許は、比較的重要な特許であると解釈できる。

外国出願での出願国として、一般に、市場がある国(輸出先)、自社製造拠点(予定)がある国(製造国)、有力な競合が存在する国、とすることが多い。但し、最近はPCT出願が多いため、実際の出願国(国内移行国という)が明らかになるのは、優先日から30か月程後となってしまうが、先行他社の外国事業の方向性を把握することができる。(尚、ヨーロッパの場合は、欧州特許庁で特許査定後に移行国を選定するため更に時間を要する。)

③拒絶査定不服審判請求時の分割出願の状況

特許庁の審査の結果、拒絶理由通知を受けた後、特許請求の範囲を減縮した(狭めた)手続き補正書(及び意見書)を提出しても審査官の心証が覆らない場合、拒絶査定となるが、どうしても権利化したい場合は、「拒絶査定不服審判」請求を行うことができる。しかし、この審判で拒絶されると後がなくなる(あきらめるしかない)ため、前記拒絶査定不服審判請求と同時に、新たに分割出願することで権利化のチャンスを維持することができる。

つまり、このような状況に至っている特許は重要特許と考えられる。

 

以上述べた通り、先行他社の出願~審判の状況や記載の内容を詳細に把握することで、その出願さている製品・技術の方向性や重要性を知ることでき、また、開発陣容の推移などを推測ができることが多い。

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