2020年9月22日アーカイブ

特許の重要性(25)【他社特許調査と対策⑯他社特許調査⑥】

(21)の図の説明を続けます。

今回は、

4)製品化後:<【他社】 登録特許の>無効資料調査

です。

製品化後に限らず、開発途中でも、「どうもこの特許の技術的範囲に入っているかも」の特許が見つかることがあります。

でも、その特許に無効理由がある場合、より具体的には、新規性または進歩性が欠如している場合、特許は無効化することができます。

無効理由として、誰もが(少なくとも、審判官や裁判官が)納得可能な資料があれば、「特許無効審判」をすれば、その特許を無効にすることができることになります。

しかしながら、現実的には、無効資料を準備し、弁護士や弁理士に「無効である鑑定書」を作成してもらって、<その特許は無効=無いと同じ>の前提で、事業を開始することもあると思っています。

他方、無効化が難しいとなると、ライセンス契約の提案となるのが通常でしょう。

 

ライセンス契約では、自社が、どれだけ有効な特許=相手(他社)から見て障害となりそうな特許、を持っているか、で有利な交渉を進めることができます。クロスライセンス契約になり得ます。

また、1件だけの特許許諾交渉は稀で、関係する複数の特許を対象になされることが多いでしょう。

出願の期間を決めて対象特許としたりします。

 

無効資料調査では、

一般に検索対象である「特許文献」は、審査で調査対象となっているため、

更に「特許文献」を検索・調査しても、有効な文献を見出すことは、困難です。

そこで、審査では(公知文献としての)調査対象とされることが稀な:

・専門書、学術文献、学会資料

・発明者の学位論文(博士論文)

・当時の自社や同業他社の技術資料・カタログ

など、入手可能であれば、何とか入手して、その内容を検討することとなります。

学会資料は、「発表時のみ」公にされるので、自社発表資料は、後々を考えて、きちんと保存しておくのが良いでしょう。

学位論文は、国立国会図書館に所蔵されているので、複数回に分ければ、全ページのコピーを取ることできます。

 

「もの」の特許の場合、(出願前に提出されていた)学位論文の実験方法の記載と、特許明細書の実施例の記載とが、実質的に一致しているのであれば、出願時前に、既に「もの」は存在していた蓋然性(がいせんせい)が高い、という主張が可能となって、新規性欠如となって、特許無効となり得ます。

 

上記は、「資料」での無効化についてですが、

例えば、日本の「もの」の特許であっても、出願前に、アメリカで「もの」として存在していることを証明できれば、その日本特許は、同様に新規性無しで、特許無効となり得ます。

特許の重要性(24)【他社特許調査と対策⑮他社特許調査⑤】

(21)の図の説明を続けます。

今回は、

3)開発段階:<【自社】技術・製品が、【他社】の>権利侵害調査(侵害予防調査)

です。

 

開発段階の初期(着手時)では、通常、障害となりそうな特許を抽出して、「回避」する方向で開発を進めます。

しかしながら、開発が進んで、具体的になってくると、都度、障害となる可能性のある特許=権利を侵害するおそれがある他社特許、が新たに見つかることがあります。

まさしく、その都度、

①開発方向に軌道修正や、

②その特許が公開段階であれば、審査請求の有無を確認して、審査請求済であれば、後に述べる無効資料調査と同様の調査を行って、特許庁への「情報提供」などが大変有効です。特許査定を阻止することは、通常は「補正」されるため、困難ですが、「補正」によって、少なくとも権利範囲を減縮させて、実質的に、障害とならなくなる場合も多くあります。

③審査未請求であれば、請求されるまで、「監視」する、ことを行います。

請求期間3年を過ぎてしまえば問題ありませんが、請求された場合は、上記②の通りです。

 

以上の通り、他社特許対策は大変です。かつ、継続的に行う必要があります。

武器となるのは、自社出願特許です。前回参照に、できるだけ多くの出願を推進することが事業を進めていくには不可欠と考えます。

出願アイデア発掘会、ブレンストーミング、など定期的に開いて、かつ、特許アイデアシートはノルマで提出させる、ことを行いましょう。

特許の重要性(23)【他社特許調査と対策⑭他社特許調査④】

前々回(21)の図の説明を続けます。

今回は、

2)開発段階:<【自社】の>出願前調査

です。

 

開発を進めていて、「これは発明では!」「特許になるのでは!」の実験結果が出た時、少なくとも、自社、実際は、同じグループの同僚・先輩・後輩?が、同じような発想で出願していないかを確認する調査と位置づけることができます。

でも、しっかりと、特許データベースを使って、出願請求範囲(請求項)を中心に、あまり範囲は広げず、キーワード等で検索して、少なくとも「新規性」は主張できる発明であることを確認しましょう。

更に、「進歩性」を主張するために、既出願特許(公開特許、公表特許、等)には記載されていない作用効果を何とか見出すために、必要であれば実験結果の再解析をやってみましょう。

「相乗効果」や、「組み合わせ阻害要因の除去」などは、進歩性を認めてくれる作用効果とされています。

逆に、数値範囲の規定:「〇以上・以下」「〇超・未満」などを要件に入れるのであれば、単なる「設計事項」(発明者が好ましいと考える数値範囲)ではないことを、実施例や比較例で十分説明できる内容としましょう。

グラフで「変曲点」を伴うX軸、Y軸の数値は、進歩性を主張しやすいとされます。

従って、「変に」データのスムージングしたグラフにすることは、「変曲点であること」の主張が困難となるおそれがあって、おススメしません。

 

検索で、競合または先行企業の特許がヒットした場合は、「被っている」技術があると認識して、出願する特許請求範囲、及び新規性・進歩性主張に係る記載は、良~く考えて、知財担当者と相談して、出願に繋げましょう。

特許の重要性(22)【他社特許調査と対策⑬他社特許調査③】

では、前回の図の説明をします。

1)開発初期:【他社】技術動向調査

です。

 

自分の権利をどうやって取るか?他社の問題特許をどうするか?

の視点から離れているので、「気軽」かも?ですが、

競合他社は、どういう方向でやっているのか?どの市場を狙っているのか?という点を抽出できるので重要です。

逆に、自社の相対的な位置や、方向性の妥当性をつかむこともできます。

 

検索範囲としては、自社製品や技術を、少し広げた、キーワードや特許分類=IPC分類で検索すると良いでしょう。

ヒット件数が多すぎる=1000件超とか、ちょっと公報内容見ると、ノイズが多い=全然関係無いのが結構ありそう、であれば、特許分類の範囲を制限するようなことをして、きちんと特許公報の内容を把握できる程度の件数にしましょう。

あまり聞かない出願人がヒットするのであれば、出願人を絞っても良いでしょう。

(“#”とかで、「〇社は含まない」ような検索式も商用データベースでは可能。)

ただし、競合他社=出願人が、どこかと合併して、名義を変えていたり、逆に、該当の事業がどこか別企業に買収されて、特許権者が別の企業になったりするとヒットしなくなくなるので、要注意です。

特許の重要性(21)【他社特許調査と対策⑫他社特許調査②】

前回の:

―――

1)開発初期:【他社】技術動向調査

2)開発段階:<【自社】 の>出願前調査

3)開発段階:<【自社】 技術・製品が、

【他社】 の>権利侵害調査(侵害予防調査)

4)製品化後:<【他社】 登録特許の>無効資料調査

―――

をちょっと無理やりですが、図で表すと以下の感じでしょうか?

次回より説明していきます。

特許の重要性(21)図

特許の重要性(20)【他社特許調査と対策⑪他社特許調査①】

しばらく、ブログ更新せずに2週間が経ってしまいました。

言い訳ではありませんが、鳥取大学工学部の「技術者倫理」の特別講義の一部を担当していて、

今月初めの2日間、と月末1日に電気情報系の1年生、

来月初めの2日間、と来年1月1日間に機械物理系の3年生、

対象で、準備等進めています。

初めての「リモート配信」のため、大分勝手が違うことに戸惑っています。

 

今回より、他社特許調査について記していきます。

製品の開発フェーズで求められる調査内容は異なって来ます。

また、実際の開発では、方針変更や、他社の問題特許が見いだされたりすると、より複雑な調査となることも多いように感じます。

まとめると、以下のようになります。

 

1)開発初期:【他社】技術動向調査

2)開発段階:<【自社】 の>出願前調査

3)開発段階:<【自社】 技術・製品が、

【他社】 の>権利侵害調査(侵害予防調査)

4)製品化後:<【他社】 登録特許の>無効資料調査

特許の重要性(19)【他社特許調査と対策⑩侵害/非侵害判断④】

今回は、侵害/非侵害の話に関連して、利用関係と特許性の話をまとめると、

以下の図のようになります。

特許の重要性(19)図

要は、特許の中に特許が含まれている関係が多くあって、(実際はもっと複雑!)

このため、「基本特許があれば大丈夫!安心!」てな話にはならないということです。

例えば、化学組成を規定した材料の基本特許があっても、

微量の添加物によって、格別な効果があったりすると、それは特許となる可能性大です。

また、製造方法の特許も成り立つし、その材料を使った応用製品の特許も成り立ちます。

基本特許も「もの」「製造方法」「その応用製品」更に、改良した「もの」、・・・と、

広範囲かつ重層化した特許網を構築できれば、一応「幾分は」安心できる基礎ができたと考えるべきでしょう。

この基礎の上に、開発の進捗に応じて、継続的に出願から権利化をしていく必要があると考えます。

そのための主役は、

アイデアが沸いて、実際にやってみて、その作用効果があれば、最優先で「即特許出願」へ向かうことができる研究者、技術者です。

でも、実際の技術者の数に比べて、特許出願に至ることができる

(つまり、課題を見つけて、解決策を見いだせて、従来とは異なる新規性・進歩性を主張できる発明であると論理立てれる)

技術者の人数(=発明者人口、とか言ったりします。)は、非常に低い率(1割以下、%オーダー)であることが現実のように感じてました。

特許の重要性(18)【他社特許調査と対策⑨侵害/非侵害判断③】

ところで、判断対象物件のことを、裁判では「イ号(いごう)」といいます。

では、以下、例2でBが円形物(装置ハ)として、

B‘が楕円形物(装置ニ)では?侵害/非侵害どちらでしょうか?

<例2>

特許の重要性(18)例2

判断は、特許法70条2項に「特許発明の、明細書や図面の記載から、その用語の意義を解釈する。」との記載に基づきます。

従って、例えば、明細書に、「ここで円形とは、真円のみならず、楕円形や、輪郭の一部が変形した円形も含む・・・」の記載があったり、

さらに、実施例に楕円の記載があれば、

楕円形も含まれると解釈されます。

 

しかしながら、

例えば、新たな開発装置の機構が、登録特許を侵害しているかどうかとか、

実際の侵害判断は困難である(技術者だけで判断できない)ことが多い。

⇒問題となりそうな特許を見出したときは、技術者自身1人で判断するのではなくて、

上長・知財担当者に情報を上げて、早めの対応が大切です!

「その特許、非常に問題ありそう。」との社内判断であれば、社内に留まらず、

外部の弁理士・弁護士の判断・鑑定に至る場合も多い、というか、お勧めです。

特許の重要性(17)【他社特許調査と対策⑧侵害/非侵害判断②】

ところで、判断対象物件のことを、裁判では「イ号(いごう)」といいます。

では、以下、例2でBが円形物、B‘が楕円形物では?侵害/非侵害どちらでしょうか?

<例2>

特許の重要性(17)例2

判断は、特許法70条2項に「特許発明の、明細書や図面の記載から、その用語の意義を解釈する。」との記載に基づきます。

従って、例えば、明細書に、「ここで円形とは、真円のみならず、楕円形や、輪郭の一部が変形した円形も含む・・・」の記載があったり、さらに、実施例に楕円の記載があれば、

楕円形も含まれると解釈される。

 

しかしながら、

例えば、新たな開発装置の機構が、登録特許を侵害しているかどうかとか、

実際の侵害判断は困難である(技術者だけで判断できない)ことが多い。

⇒問題となりそうな特許を見出したときは、技術者が判断するのではなくて、

上長・知財担当者に情報を上げて、早めの対応が大切です!

・社内判断に留まらず、外部の弁理士・弁護士の判断・鑑定に至る場合も多い、というか、お勧めです。

特許の重要性(16)【他社特許調査と対策⑦侵害/非侵害判断①】

今回から、しばらくは、自社の製品が、他社の特許を侵害している=他社特許の技術的範囲に含まれている、かどうかの判断について述べます。

 

【基本】は、「特許請求の範囲」「請求項」の構成要件に分解して判断する、ことを行います。

判断対象物件が特許発明の構成要件を全て満たしている

=一致していれば、侵害と判断します。⇒オールエレメントルールと言います。

以下、例1では、X社製品Pは非侵害、Y社製品Qは侵害している判断となります。

<例1>

特許の重要性(16)例1