2020年8月28日アーカイブ

特許の重要性(15)【他社特許調査と対策⑥特許とは⑥】

今回は、PDF1ページ目、2ページ目、共に出ている「優先権主張」について記します。

 

特許は、先願主義といわれていて、同じ内容の出願があった場合、出願が最も早いものが勝ち、です。

従って、なるべく早く出願して、「出願日を確保」することが重要です。

しかし、とは言っても、本当はもう少し、実験や試作をしてみて、有効な範囲をしっかりと確かめたい=時間が欲しい、という現実があることも多いと思います。

 

そこで、実験や試作した「結果予想」を含めた、出願を、とりあえず行って、

出願後、実際の実験・試作「結果」を盛り込んで、

先に出願した特許を「優先権主張」して、

1年以内に再度「出願」することを良く行います。

PCT出願では、先の日本の出願を優先権主張します。

(費用節約のため、1年以内に出願した、類似の複数の出願を優先権主張する場合もあります。)

 

ポイントは、

1)先の出願と、後の優先権主張を伴う出願とで、「技術的思想」が同じか、です。

つまり、発明=請求項の内容が実質的に同じか、です。

2)また、先の出願で、「AとBとCを備える○○」があって、

後の出願で、「AとBとXを備える〇〇」があったとすると、

ABCは、先の出願日=優先日で新規性などの判断がされて、

ABXは、後の出願日で新規性などの判断がされる、

こととなります。

 

実務的には、1年といっても、発明者にとって、それほど時間は無い感じで、

・実施例や比較例を増やす、

・請求項の従属項を増やす、

・「もの」の特許であれば、「製造方法」の特許(請求項)も入れる、

程度でしょうか。

 

PCT出願する場合、本来は、上記内容を増やしたかったけれど、文章(文言)を増やすことも無く「そのまんま」出願した経験も結構ありました。。。

特許の重要性(14)【他社特許調査と対策⑤特許とは⑤】

前回は、前々回添付したPDFの1ページ目、つまり、日本出願について説明しました。

今回は、PDF2ページ目の、外国出願の内、PCT出願について説明します。

 

〇2ページ目のポイント;

0)ずいぶんと昔、30年前位?は、外国出願は、日本国内出願の後、出願しようとする国の言語に翻訳した後、日本出願の12ケ月以内に、優先権主張して、

外国の特許庁に直接出願するようなこともやっていましたが。。。

1)今は、PCT出願が一般的です。

2)日本出願の12ケ月以内に、

優先権主張して、

PCT条約加盟国すべてに、出願したと同様となる、

PCT(国際)出願を、日本特許庁に「日本語」で行うこととなります。

3)PDF2ページに記載の通り、いろいろとメリットありますが、

赤枠で示した、優先日=日本出願日から30ケ月まで、

国内移行=各国への出願、の時間的猶予があることです。

実際にどの国(日本も含めて)に出願するか(翻訳する費用や各国での出願費用)を考えたり、

その出願=発明の価値(重要性)は、日本出願時に比べて、どうだろうか、とか判断できる時間があることとなります。

4)出願国=(国内)移行国としは、自国(日本)、市場のある(輸出(予定))国、競合がいる国、将来製造拠点の計画がある国、などで判断することが一般的でしょうか?

5)PCT出願では、

左列に記載のように、「条約〇条補正」とかありますが、先ずやることは無いです。

私は、100件近く処理しましたが、ゼロでした。

(代理人=特許事務所に問い合わせても、有用性を主張するところはありませんでした。)

6)PCT出願では、(日本出願と同様に優先日から)18ケ月後に国際公開(WEB上に)されますが、

その書式の中に、「国際調査報告ISR」があって、日本の特許庁審査官が、特許性(新規性・進歩性・産業上の利用可能性)についての判断が示されます。

この判断は、日本の特許庁審査官がしているので、

日本へ移行した場合、審査結果が示されているとみて良いでしょう。

ここで、(産業上の利用可能性で否定されることはほぼ無いので)新規性と進歩性が認められているのであれば、

日本出願について、早期審査請求すれば、それこそ即、特許査定となります!

特許の重要性(13)【他社特許調査と対策④特許とは④】

前回添付したPDFの説明をします。

〇1ページ目のポイント;

1)特許出願から1年6ケ月で公開となって、公開公報が発行される。

2)審査請求の期限は、出願から3年以内。

(審査請求しなかったら、「未請求取り上げ」となる。)

3)審査請求すると、今は1年ちょっとで、「拒絶理由通知」が来て、「補正書」・「意見書」で応答することとなります。

いきなり、拒絶理由が無くて、「特許査定」の可能性ゼロではありませんが、私の経験では、100件に1,2件程度の感じでした。

4)通常は、拒絶理由通知に対して、「補正書」(拒絶の理由を解消するために、実質的には特許請求の範囲を狭めた(減縮する、という)、「特許請求の範囲」に補正する。)と、拒絶の理由は解消した主張の「意見書」を提出して応答することが多い。

結構あるのが、審査官が、勘違いしていたり、進歩性を否定するための引用文献(引例、ともいう。)が不適当であったりすると、「意見書」だけで、応答することもありました。

5)補正書提出後、審査官が「拒絶の理由を発見しない」となると、「特許査定」となって、特許料を収めると(最初は3年分。でも安い。年次が上がると、額も上がる。)、設定登録されて、特許公報が発行されます。

6)意見書・補正書を提出しても、拒絶理由通知が、複数回来ることがあります。

私の経験では、半年ごとに5回だったでしょうか、その後拒絶査定となった案件がありました。

また、このページには記載されていませんが「最後の拒絶理由通知」という、補正が制限される拒絶理由通知も受けたりします。

7)拒絶査定となっても、未だ請求項を減縮しても権利として有効であったり、何とか権利化したい、と考えれば、拒絶査定不服審判を請求します。また、図の通り、審判でダメであっても、知財高裁へ提訴がありますが、現実的には、提訴=裁判所のハードルは高いので、審判請求と同時に、審判がダメでも、特許が死なせないために、「分割出願」を並行して行うことが一般的です。

特許の重要性(11)【他社特許調査と対策②特許とは②】

昨日のポイントは、

1)特許の種類が、「もの」、「方法」、「製造方法」の3つあって、

→「製造方法」特許は、その製造方法による「もの」についても権利範囲内!

⇒「方法」特許ではなくて、「製造方法」特許の方が、権利範囲が広い。

でした。

今回は、2)権利期間についてです。

―――

2)権利期間

「出願日」から20年間

・特許=登録になった日は関係ない。

⇒登録になるのが遅いと権利期間が短くなる。(早期審査の活用等)

【先願主義について】(いち早く発明を公開しようとしたものを保護する。)

競合会社の技術者・開発者も同じようなことを考えて、実験・開発している。

⇒似たような特許(ほとんど同じかも)を、同時期に出願する可能性大。

⇒早い「出願日」を確保することが重要!

とはいっても、拙速過ぎて、明細書の記載の完成度が低いと、有効な特許とならない。(「瑕疵がある」とか、「実施可能要件を備えていない」とかいう。)

結局、出願し直しとなると・・・何やってんんだ!ということになります。

<類似事例>新製品の発表日(顧客への紹介日)に間に合わせる出願。後で、「しまった!」が「あるある」パターンかもです。

【例外】実質最長21年間となる優先権出願がある。(後述)

―――

特許の重要性(10)【他社特許調査と対策①特許とは①】

ほぼ1週間、いろいろあってアップできていませんでした。

8/26、及び9/10のセミナーはコロナの影響で延期・中止となりました。。。(コロナ憎し!)

 

今回から、過去のセミナープレゼン資料からの抜粋、追記して、記していきます。

テーマは、「新製品ビジネスを成功に導くための他社特許調査と対策の基礎」です。

 

先ず、「特許とは」ということで、「特許法」で検索すると、第一条から確認できますが、

法律の条文は、〇条〇項〇号の順に記載されていますが、「項」は「号」は明記されていません。

「項」の「1」項は省略されていて、数字の「2」以降から表記されています。

他方、その下の「号」は、「漢数字」で「一」も省略されません。

 

では、特許法第一条から見てみると、多くの法律で、第一条では「法律の目的」が記されています。

(横道に逸れますが、「教育基本法」の第一条も、(教育の目的)が記されていて、何だと思いますか?「人格の完成」を目指す、です。ちょっと変人の私は、中学生の時(当時はネット無し、百科事典とかのみです。懐かしい?!沖縄が日本に返還された頃だったような?)に、「法律の目的」のレビューをしていて、たまたま「社会化担任から(教育の目的)は」の問いに、前記のように答えたことを思い出します。)

第二条で、(発明の定義)で、「特許の種類」についてされています。

関連した内容を以下パワーポイントから文言をコピペしています。

<パワーポイントの資料が欲しい方は、連絡下さい!>

―――

0)特許法 <1)特許の種類>

第一条(目的)この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

第二条(定義)(1項)この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2(項) この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3(項) この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一(号) 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し・・・)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二(号) 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三(号) 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、・・・譲渡等の申出をする行為

4 (項) この法律で「プログラム等」とは、・・・<プログラムは著作権法でも保護>

―――

0)特許法

第六十八条(特許権の効力)特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。・・・

(⇔「侵害」)

―――

<特許制度の目的>(知的財産権制度説明会(初心者向けテキスト)から引用)

発明は目に見えない思想、アイデアなので、・・・有体物のように目に見える形でだれかがそれを占有し、支配できない。したがって、制度により 適切に保護がなされなければ、発明者は自分の発明を他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することができないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして無駄な研究、投資をすることになっ てしまいます。そこで、特許制度はこういったことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件の もとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用 の機会を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより 技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。  言い換えれば、特許制度は、発明を世にオープン(開示)することを条件に、発明者に対 して独占的実施権を付与するとともに、この発明の開示により、発明利用の途が提供される ことになり、改良発明の誘発や新たな発明が生まれる機会が生ずることになるのです。 この目的は、特許制度のほか、実用新案制度、意匠制度も同様です。

―――

1)特許の種類

・「もの」:合金組成、セミラックス組成、合金粉末、・・・装置、混合物

・「方法」:測定方法、評価方法、混合方法

・「製造方法」:合金の熱処理工程、粉末の混合工程

→「製造方法」特許は、その製造方法による「もの」についても権利範囲内!

⇒「方法」特許ではなくて、「製造方法」特許の方が、権利範囲が広い。

例えば、混合方法に以下特徴がある工程がある製造工程であれば、

「少なくとも以下の3条件を満たす粉末の混合方法」での出願より

「少なくとも以下の3条件を満たす粉末混合工程を備える○○の製造方法」の出願の方が権利範囲が広い=「もの」までカバーする。

1:ボールミル設備を使用する

2:ボールの主材質がジルコニアである

3:ボールの直径が2mm以上5mm以下

―――

特許の重要性(9)【後発でも勝つために⑥調査結果に基づいた自社出願の推進③】

〇製造方法特許・製造装置特許の出願推進

既に述べたように、通常、製品に係る「もの」の特許の出願時期に比べて、「製造方法」特許や「製造設備」特許は、実際は秘匿としたい情報を多く含むことが多ため、遅れての出願となることが多い。

後発においては、当業者においては、必然的に到達するであろう製造方法・製造条件に関するものであって、かつ、従来文献には明確に開示されていない、製造・管理パラメータを規定した特許を、早めに出願することで、先行他社にとって、無視できない(対策や交渉が必要となる)特許を創出できる可能性がある。

筆者の失敗経験を紹介する。当時、ある製品で先行していて、市場でも高シェアを維持していた。後発他社に比べて相当先行しているとの自負もあって、製造条件を規定した製造方法特許については、出願にさほど積極的ではなかった。ある時、後発が出願した「当業者(=「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」とされている。特許法29条2項に記載。)にとって当然の製造パラメータ範囲」を規定し、かつ新規なパラメータ範囲を付加した特許が公開された。審査経緯の監視によって、新規性・進歩性が認められ特許される可能性が高いと判断できた。そこで、特許庁への情報提供によって権利化を阻止しようと試みたが、調査の結果「当業者では当然の製造パラメータ範囲」が明記された特許文献を見出すことはできず、提出した文献で進歩性を強く否定できるものではなかった。当然ながら、進歩性について審査官の心証を覆すに至らず、特許査定となった。その後の製品生産において、前記新規のパラメータ範囲に含まれる製品は実施できない状況となった。

失敗を分析するに、実際は、後発に猛烈にキャッチアップされているにも関わらず「相当先行しているという自負」=「間違った認識」と、「製造方法の特許出願に積極的ではなかった」=「できれば、秘匿を続けたいとの考え」によるものと結論付けされた。当然ながら失敗の後は、製造条件に係る出願も積極的かつ迅速な対応へと変化させた。

 

〇おわりに

本節では「後発であっても特許で勝つ」ことを念頭に述べた。先ずは、先行他社の出願傾向等を詳細に調査、把握することが必要である。より重要なのは、その調査結果に基づいて、先行他社が無視できない自社特許の出願を推進することである。その結果、有利な条件での特許ライセンス契約が期待でき、事業の継続が可能となる。

特許の重要性(8)【後発でも勝つために⑤調査結果に基づいた自社出願の推進②】

〇特許の中に特許

図1の模式図に示すように、新たな構成要件が加わることで、予想できない作用効果や格別な作用効果等によって進歩性が認められて、特許されることは一般的である。つまり、ある特許の範囲の中に、別の特許が存在することとなる。

特許発明(構成A,B,C)の範囲の中に、製品Pがあり、更にその中に製品Qが存在する。製品P及びQは、それぞれ別の特許発明とする。

更に、特許発明の特許権者はA社、製品P特許の特許権者はB社、製品Q特許の特許権者はC社であるとする。

より具体例を表1に例示する。

特許発明が、脚(構成A)と、座面(構成B)と、背面(構成C)と、を備えた椅子とした場合、

製品Pでは、座面と脚の間に回転手段(構成D)を備えていて、

製品Qでは、更に両手肘掛け部(構成E)が備わっている。

市場において、製品Qが売れ筋商品であるが、製品Qを製造販売するためには、

・A社は、B社及びC社から実施許諾を得る必要がある。同様に、

・B社は、A社及びC社から実施許諾を得る必要がある。

・C社は、A社及びB社から実施許諾を得る必要がある。

つまり、A社、B社、C社は相互に実施許諾契約を結ばないと、製品Qを製造販売することはできない。このことは、たとえC社が後発であっても、市場を先取りした構成要件を含む特許を、他社に先がけて権利化できれば、有利なビジネス展開が可能であることを示唆している。

後発が先行他社に勝つためには、新たな要件を備えることで、優れた作用効果を奏する発明を、どうにかして出願推進していく姿勢が重要と考えられる。こういった出願件数を増やしていけば、市場を先取りする有用な特許の権利化可能性が高くなる。

新たな要件としては、既に述べたように、先行各社の出願傾向や領域を把握して、先ずは、他社が注目していない課題の解決や、技術領域を考慮した開発・検討による出願を進めれば比較的権利化が容易であると考えられる。

特許の重要性(8)_図