今回も3次以降の投資で経験することが多いと推測します。
「誰もが経験する?工法の大変更」について記します。
新製品QCD(1)と(2)で、新製品の工程は、「失敗」を避けるために、実績のある設備や材料でスタートすべきと述べました。当然のことですが、「工法」についても同様に実績ある工法を採用します。
しかしながら、3次以降の投資を行うフェーズとなると、各工程のリードタイム等が把握できてくるため、「この工程は、今後の増産において、n倍化等では、到底、リードタイム、コスト、等が合わなくなる。」と感じる工程を認識するようになります。
私が経験した2例について記します。
1例目は、ステンレス製の枠(SUS枠)での位置合わせから、SUS枠無しへの変更です。
セラミック積層部品は、セラミックグリーンシートを成形後、グリーンシートに、穴明け(ビアホールまたはスルーホール形成)した後、所望とする内部電極パターンをスクリーン印刷することで、セラミックス内部に、3次元の配線構造が可能となるのですが、シートに対して、穴明けの位置、印刷の位置を再現性良く「合わせる」ことが必要です。積層時も積層方向に隣接するシートの位置を「合わせる」ことが必要です。
このため、シート成形後、キャリアフィルム(PETフィルム)からシートのみを剥離して、ステンレス製の枠(SUS枠)に糊付けして、ハンドリングをしていました。SUS枠を位置合わせの基準として、穴明け、印刷を行い、積層時に、位置ずれしないようにSUS枠から外されて(打ち抜かれて)、圧着され、積層体として一体化されます。
このSUS枠は、ハンドリングされるために、ある程度の機械的強度、繰り返し耐久性、などが必要のため、シートの十倍以上の重さがありました。
また、積層時にシートがSUS枠から外された後、枠に糊付けされたシート残部の除去、洗浄などの工数が必要でした。手作業での限界によって、ある時期から「SUS枠洗浄装置」も導入していました。
増産するに伴って、SUS枠であふれる、状態となっていました。
SUS枠の「窓」の大きさによって、製品となる面積が決まるため、更に増産するためには、この「窓の面積」を大きくする必要あります。
種々検討した結果、縦横共に2倍にして、面積4倍化を進めることになりました。
SUS枠での面積4倍化を「味見試作・実験」したところ、その<重さ>、そして、SUS枠からシートを打ち抜く際に必要な<力>の感触によって、これでは実用化できない、との結論に至りました。
従来より「でかくて重い」SUS枠が工場にあふれることも想像できるものではありませんでした。
現場から理解も得られないことは明白でした。
結局、採用した工法は、
シートをキャリアフィルムから剥離することなく、「シートとキャリアフィルム一体」の状態で、積層工程まで、ハンドリングする工法でした。
穴明け工程で、全てのシートに位置合わせ用の穴を空けて、その穴を基準に、後工程である印刷などを行う、こととなりました。
文章で書くと、さらっと数行となりますが、この大変更に伴う種々検討事項は相当量ありました。
しかし、何とか、当初の面積4倍化を達成し、増産可能となりました。
次回は、穴明け工法を、従来からのパンチダイ方式から、レーザー方式への変更について述べます。