Ⅱ.自社(予定の)技術・製品が先行他社の権利侵害していないかの調査(侵害予防調査)
前項では、「事業者としての先行他社」を特許出願傾向から捉えることと解釈できる。本項では、「開発予定の自社製品・技術」が具体的に明らかになった時点で行われる調査であって、抽出した先行他社の特許が実質的に登録特許であるかどうかで区分して、以下のような検討、判断が行われる。
(1)将来障害となる可能性がある場合(未審査公開特許、審査中の公開特許)
①回避可能性の検討
②情報提供による無害化
(2)障害となる場合(登録特許、特許査定された特許)
①回避可能性の検討
②無効化可能性の検討(将来ライセンス交渉要否の検討)
それぞれについて、以下に述べる。
(1)将来障害となる可能性がある場合
ここで、将来とは、その時点で特許の技術的範囲が確定していない場合であって、具体的には公開段階の特許における「特許請求の範囲」から侵害/非侵害判断する。
自社の技術・製品が、将来先行他社の「特許請求の範囲」に入ってしまう可能性がある場合、現実的には前記①回避可能性の検討と、②情報提供による無害化は、同時進行的に検討されることが多い。①は、主に技術者によって検討され、他方②は、特許担当者によって検討される。
②の「情報提供」については、特定された公開特許に対して、新規性・進歩性を有していないと主張可能な特許文献を新たに調査して、特許庁に書面を提出する手続きである。数年以上前では、審査請求されてから実際の審査開始まで比較的長期間であったため、審査請求後の調査開始で時間的余裕があったが、最近は審査請求後数か月で審査結果が明らかとなることが多い。従って、公開特許を抽出した時点で、調査を開始して提出書面を準備しておいて、審査請求された時点で、書面を提出することが望ましい。
また、「情報提供」は、前述の外国特許(各国ファミリ特許という)の内、少なくとも中国や米国では有効であって、日本での審査が最も早く進むとは限らず、各国での審査進捗を監視しながらの対応が必要である。
実務では、回避の現実性と、特許の手続きの状況を監視しながら、外国含めた各国での進捗があった時点で、適宜判断をしていくことが必要である。
(2)障害となる場合(登録特許、特許査定された特許)
登録特許への対応は現実的にはかなり限定される。
①回避可能性の検討
回避できるのであれば、回避することが最善と考える。更には、技術的範囲の解釈に曖昧さが疑われる余地があるのであれば、弁理士や弁護士に鑑定書を作成してもらい、後の係争に備えることも有効である。
②無効化可能性の検討(将来ライセンス交渉要否の検討)
本検討は、実質的に次項と同様のため次項にて述べる。