〇特許の中に特許
図1の模式図に示すように、新たな構成要件が加わることで、予想できない作用効果や格別な作用効果等によって進歩性が認められて、特許されることは一般的である。つまり、ある特許の範囲の中に、別の特許が存在することとなる。
特許発明(構成A,B,C)の範囲の中に、製品Pがあり、更にその中に製品Qが存在する。製品P及びQは、それぞれ別の特許発明とする。
更に、特許発明の特許権者はA社、製品P特許の特許権者はB社、製品Q特許の特許権者はC社であるとする。
より具体例を表1に例示する。
特許発明が、脚(構成A)と、座面(構成B)と、背面(構成C)と、を備えた椅子とした場合、
製品Pでは、座面と脚の間に回転手段(構成D)を備えていて、
製品Qでは、更に両手肘掛け部(構成E)が備わっている。
市場において、製品Qが売れ筋商品であるが、製品Qを製造販売するためには、
・A社は、B社及びC社から実施許諾を得る必要がある。同様に、
・B社は、A社及びC社から実施許諾を得る必要がある。
・C社は、A社及びB社から実施許諾を得る必要がある。
つまり、A社、B社、C社は相互に実施許諾契約を結ばないと、製品Qを製造販売することはできない。このことは、たとえC社が後発であっても、市場を先取りした構成要件を含む特許を、他社に先がけて権利化できれば、有利なビジネス展開が可能であることを示唆している。
後発が先行他社に勝つためには、新たな要件を備えることで、優れた作用効果を奏する発明を、どうにかして出願推進していく姿勢が重要と考えられる。こういった出願件数を増やしていけば、市場を先取りする有用な特許の権利化可能性が高くなる。
新たな要件としては、既に述べたように、先行各社の出願傾向や領域を把握して、先ずは、他社が注目していない課題の解決や、技術領域を考慮した開発・検討による出願を進めれば比較的権利化が容易であると考えられる。