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特許の重要性(11)【他社特許調査と対策②特許とは②】

昨日のポイントは、

1)特許の種類が、「もの」、「方法」、「製造方法」の3つあって、

→「製造方法」特許は、その製造方法による「もの」についても権利範囲内!

⇒「方法」特許ではなくて、「製造方法」特許の方が、権利範囲が広い。

でした。

今回は、2)権利期間についてです。

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2)権利期間

「出願日」から20年間

・特許=登録になった日は関係ない。

⇒登録になるのが遅いと権利期間が短くなる。(早期審査の活用等)

【先願主義について】(いち早く発明を公開しようとしたものを保護する。)

競合会社の技術者・開発者も同じようなことを考えて、実験・開発している。

⇒似たような特許(ほとんど同じかも)を、同時期に出願する可能性大。

⇒早い「出願日」を確保することが重要!

とはいっても、拙速過ぎて、明細書の記載の完成度が低いと、有効な特許とならない。(「瑕疵がある」とか、「実施可能要件を備えていない」とかいう。)

結局、出願し直しとなると・・・何やってんんだ!ということになります。

<類似事例>新製品の発表日(顧客への紹介日)に間に合わせる出願。後で、「しまった!」が「あるある」パターンかもです。

【例外】実質最長21年間となる優先権出願がある。(後述)

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特許の重要性(10)【他社特許調査と対策①特許とは①】

ほぼ1週間、いろいろあってアップできていませんでした。

8/26、及び9/10のセミナーはコロナの影響で延期・中止となりました。。。(コロナ憎し!)

 

今回から、過去のセミナープレゼン資料からの抜粋、追記して、記していきます。

テーマは、「新製品ビジネスを成功に導くための他社特許調査と対策の基礎」です。

 

先ず、「特許とは」ということで、「特許法」で検索すると、第一条から確認できますが、

法律の条文は、〇条〇項〇号の順に記載されていますが、「項」は「号」は明記されていません。

「項」の「1」項は省略されていて、数字の「2」以降から表記されています。

他方、その下の「号」は、「漢数字」で「一」も省略されません。

 

では、特許法第一条から見てみると、多くの法律で、第一条では「法律の目的」が記されています。

(横道に逸れますが、「教育基本法」の第一条も、(教育の目的)が記されていて、何だと思いますか?「人格の完成」を目指す、です。ちょっと変人の私は、中学生の時(当時はネット無し、百科事典とかのみです。懐かしい?!沖縄が日本に返還された頃だったような?)に、「法律の目的」のレビューをしていて、たまたま「社会化担任から(教育の目的)は」の問いに、前記のように答えたことを思い出します。)

第二条で、(発明の定義)で、「特許の種類」についてされています。

関連した内容を以下パワーポイントから文言をコピペしています。

<パワーポイントの資料が欲しい方は、連絡下さい!>

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0)特許法 <1)特許の種類>

第一条(目的)この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

第二条(定義)(1項)この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2(項) この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3(項) この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一(号) 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し・・・)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二(号) 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三(号) 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、・・・譲渡等の申出をする行為

4 (項) この法律で「プログラム等」とは、・・・<プログラムは著作権法でも保護>

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0)特許法

第六十八条(特許権の効力)特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。・・・

(⇔「侵害」)

―――

<特許制度の目的>(知的財産権制度説明会(初心者向けテキスト)から引用)

発明は目に見えない思想、アイデアなので、・・・有体物のように目に見える形でだれかがそれを占有し、支配できない。したがって、制度により 適切に保護がなされなければ、発明者は自分の発明を他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することができないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして無駄な研究、投資をすることになっ てしまいます。そこで、特許制度はこういったことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件の もとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用 の機会を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより 技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。  言い換えれば、特許制度は、発明を世にオープン(開示)することを条件に、発明者に対 して独占的実施権を付与するとともに、この発明の開示により、発明利用の途が提供される ことになり、改良発明の誘発や新たな発明が生まれる機会が生ずることになるのです。 この目的は、特許制度のほか、実用新案制度、意匠制度も同様です。

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1)特許の種類

・「もの」:合金組成、セミラックス組成、合金粉末、・・・装置、混合物

・「方法」:測定方法、評価方法、混合方法

・「製造方法」:合金の熱処理工程、粉末の混合工程

→「製造方法」特許は、その製造方法による「もの」についても権利範囲内!

⇒「方法」特許ではなくて、「製造方法」特許の方が、権利範囲が広い。

例えば、混合方法に以下特徴がある工程がある製造工程であれば、

「少なくとも以下の3条件を満たす粉末の混合方法」での出願より

「少なくとも以下の3条件を満たす粉末混合工程を備える○○の製造方法」の出願の方が権利範囲が広い=「もの」までカバーする。

1:ボールミル設備を使用する

2:ボールの主材質がジルコニアである

3:ボールの直径が2mm以上5mm以下

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特許の重要性(9)【後発でも勝つために⑥調査結果に基づいた自社出願の推進③】

〇製造方法特許・製造装置特許の出願推進

既に述べたように、通常、製品に係る「もの」の特許の出願時期に比べて、「製造方法」特許や「製造設備」特許は、実際は秘匿としたい情報を多く含むことが多ため、遅れての出願となることが多い。

後発においては、当業者においては、必然的に到達するであろう製造方法・製造条件に関するものであって、かつ、従来文献には明確に開示されていない、製造・管理パラメータを規定した特許を、早めに出願することで、先行他社にとって、無視できない(対策や交渉が必要となる)特許を創出できる可能性がある。

筆者の失敗経験を紹介する。当時、ある製品で先行していて、市場でも高シェアを維持していた。後発他社に比べて相当先行しているとの自負もあって、製造条件を規定した製造方法特許については、出願にさほど積極的ではなかった。ある時、後発が出願した「当業者(=「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」とされている。特許法29条2項に記載。)にとって当然の製造パラメータ範囲」を規定し、かつ新規なパラメータ範囲を付加した特許が公開された。審査経緯の監視によって、新規性・進歩性が認められ特許される可能性が高いと判断できた。そこで、特許庁への情報提供によって権利化を阻止しようと試みたが、調査の結果「当業者では当然の製造パラメータ範囲」が明記された特許文献を見出すことはできず、提出した文献で進歩性を強く否定できるものではなかった。当然ながら、進歩性について審査官の心証を覆すに至らず、特許査定となった。その後の製品生産において、前記新規のパラメータ範囲に含まれる製品は実施できない状況となった。

失敗を分析するに、実際は、後発に猛烈にキャッチアップされているにも関わらず「相当先行しているという自負」=「間違った認識」と、「製造方法の特許出願に積極的ではなかった」=「できれば、秘匿を続けたいとの考え」によるものと結論付けされた。当然ながら失敗の後は、製造条件に係る出願も積極的かつ迅速な対応へと変化させた。

 

〇おわりに

本節では「後発であっても特許で勝つ」ことを念頭に述べた。先ずは、先行他社の出願傾向等を詳細に調査、把握することが必要である。より重要なのは、その調査結果に基づいて、先行他社が無視できない自社特許の出願を推進することである。その結果、有利な条件での特許ライセンス契約が期待でき、事業の継続が可能となる。

特許の重要性(8)【後発でも勝つために⑤調査結果に基づいた自社出願の推進②】

〇特許の中に特許

図1の模式図に示すように、新たな構成要件が加わることで、予想できない作用効果や格別な作用効果等によって進歩性が認められて、特許されることは一般的である。つまり、ある特許の範囲の中に、別の特許が存在することとなる。

特許発明(構成A,B,C)の範囲の中に、製品Pがあり、更にその中に製品Qが存在する。製品P及びQは、それぞれ別の特許発明とする。

更に、特許発明の特許権者はA社、製品P特許の特許権者はB社、製品Q特許の特許権者はC社であるとする。

より具体例を表1に例示する。

特許発明が、脚(構成A)と、座面(構成B)と、背面(構成C)と、を備えた椅子とした場合、

製品Pでは、座面と脚の間に回転手段(構成D)を備えていて、

製品Qでは、更に両手肘掛け部(構成E)が備わっている。

市場において、製品Qが売れ筋商品であるが、製品Qを製造販売するためには、

・A社は、B社及びC社から実施許諾を得る必要がある。同様に、

・B社は、A社及びC社から実施許諾を得る必要がある。

・C社は、A社及びB社から実施許諾を得る必要がある。

つまり、A社、B社、C社は相互に実施許諾契約を結ばないと、製品Qを製造販売することはできない。このことは、たとえC社が後発であっても、市場を先取りした構成要件を含む特許を、他社に先がけて権利化できれば、有利なビジネス展開が可能であることを示唆している。

後発が先行他社に勝つためには、新たな要件を備えることで、優れた作用効果を奏する発明を、どうにかして出願推進していく姿勢が重要と考えられる。こういった出願件数を増やしていけば、市場を先取りする有用な特許の権利化可能性が高くなる。

新たな要件としては、既に述べたように、先行各社の出願傾向や領域を把握して、先ずは、他社が注目していない課題の解決や、技術領域を考慮した開発・検討による出願を進めれば比較的権利化が容易であると考えられる。

特許の重要性(8)_図

特許の重要性(7)【後発でも勝つために④調査結果に基づいた自社出願の推進①】

前項において、先行他社特許への対策の基本としては、既に存在する登録特許は回避し、減縮できる特許へはできるだけの手段を講じることであって、限られた対応しかできない。

後発であっても勝つためには、先行他社から疎ましく思えるような自社出願の推進が必要である。

 

〇将来のライセンス交渉に備える

前項で無効資料調査について述べたが、通常、先行他社は有効かつ重要な特許を1件のみではなくて、複数件の有していることが多い。また、ある特許1件に対して、無効化できる可能性が高い資料を抽出できても、全ての有効かつ重要な特許に対して、有効な無効資料を抽出するには不可能に近い。更には、無効審判の手続きを開始して、たとえ無効と判断されても、裁判も含めた最終的な結論がでるまでは、その特許は有効である。

従って、後発が事業を行うには、先行他社とのライセンス交渉により、現在公開段階の特許も含めて複数特許実施許諾を受ける交渉が現実的と考えられる。

後発であっても、ライセンス交渉を有利に進めるためには、自社出願を推進して、先行他社から、気になる特許、できれば疎ましく感じる、つまり、先行他社から権利化されると困る特許の出願を目指すべきと考える。

少なくとも、先行他社が気になる特許を複数件出願しておれば、一方的な実施許諾契約ではなく、クロスライセンス契約へと有利な立場に移行することも不可能ではない。

ここで、実施許諾等を受ける場合の特許の特定に関して、登録特許の特許番号での規定も可能であるが、その場合、契約後、新たに実施許諾してもらいたい特許が出現した際、手続きが煩雑となるおそれがある。従って、関連する特許について、過去から近い将来を含めた出願日または優先日の範囲で複数の特許を特定することによって、双方にとって後日、新たな懸案事項の発生が抑制できると考える。つまり、新たに出願される特許、更には登録される特許への評価及び交渉が必要となくなる。

特許の重要性(6)【後発でも勝つために③特許調査の目的③】

Ⅲ.自社(予定の)技術・製品の先行他社登録特許の無効資料調査

登録特許が無効である=新規性・進歩性が無い、と主張可能な、文献を抽出する調査であって、無効審判を想定したものである。しかしながら、有効な文献を抽出することは困難であることが多い。

少なくとも、データベース検索が容易な内外の特許文献の検索でのヒットは期待できないと考えた方が良い。

有効は文献を抽出できる可能性がある調査として、先行他社発明者の学術論文は当然チェックした後、以下2項程度は、しっかりと調査すべきと考える。

(1)先行他社の(キーパーソン)発明者・同僚・関係者の学位論文(国立国会図書館に所蔵)

(2)先行他社の「競合」におけるキーパーソンの学位論文

尚、特許異議申立制度が2015年に再開しているが、特許が取り消しされる割合は10%程度であって、無効審判に比べて手続きのハードルも低いが、取り消し率も低い。

筆者も数件を申立したが、全て技術的範囲は減縮されず、そのまま維持された経験のみである。

異議申立するかどうかは、代理人(特許事務所)等含めた検討を行って、「ダメ元」覚悟での対応にならざるを得ないのが実際と感じる。。

特許の重要性(5)【後発でも勝つために②特許調査の目的②】

Ⅱ.自社(予定の)技術・製品が先行他社の権利侵害していないかの調査(侵害予防調査)

前項では、「事業者としての先行他社」を特許出願傾向から捉えることと解釈できる。本項では、「開発予定の自社製品・技術」が具体的に明らかになった時点で行われる調査であって、抽出した先行他社の特許が実質的に登録特許であるかどうかで区分して、以下のような検討、判断が行われる。

(1)将来障害となる可能性がある場合(未審査公開特許、審査中の公開特許)

①回避可能性の検討

②情報提供による無害化

(2)障害となる場合(登録特許、特許査定された特許)

①回避可能性の検討

②無効化可能性の検討(将来ライセンス交渉要否の検討)

それぞれについて、以下に述べる。

 

(1)将来障害となる可能性がある場合

ここで、将来とは、その時点で特許の技術的範囲が確定していない場合であって、具体的には公開段階の特許における「特許請求の範囲」から侵害/非侵害判断する。

自社の技術・製品が、将来先行他社の「特許請求の範囲」に入ってしまう可能性がある場合、現実的には前記①回避可能性の検討と、②情報提供による無害化は、同時進行的に検討されることが多い。①は、主に技術者によって検討され、他方②は、特許担当者によって検討される。

②の「情報提供」については、特定された公開特許に対して、新規性・進歩性を有していないと主張可能な特許文献を新たに調査して、特許庁に書面を提出する手続きである。数年以上前では、審査請求されてから実際の審査開始まで比較的長期間であったため、審査請求後の調査開始で時間的余裕があったが、最近は審査請求後数か月で審査結果が明らかとなることが多い。従って、公開特許を抽出した時点で、調査を開始して提出書面を準備しておいて、審査請求された時点で、書面を提出することが望ましい。

また、「情報提供」は、前述の外国特許(各国ファミリ特許という)の内、少なくとも中国や米国では有効であって、日本での審査が最も早く進むとは限らず、各国での審査進捗を監視しながらの対応が必要である。

実務では、回避の現実性と、特許の手続きの状況を監視しながら、外国含めた各国での進捗があった時点で、適宜判断をしていくことが必要である。

 

(2)障害となる場合(登録特許、特許査定された特許)

登録特許への対応は現実的にはかなり限定される。

①回避可能性の検討

回避できるのであれば、回避することが最善と考える。更には、技術的範囲の解釈に曖昧さが疑われる余地があるのであれば、弁理士や弁護士に鑑定書を作成してもらい、後の係争に備えることも有効である。

②無効化可能性の検討(将来ライセンス交渉要否の検討)

本検討は、実質的に次項と同様のため次項にて述べる。

特許の重要性(4)【後発でも勝つために①特許調査の目的①】

ひと月前に特許について、3回記してきました。今回から、少し各論について述べます。

 

後発で新規市場に参入する場合、先行他社の特許調査は不可欠である。後発であることに焦点を当てて、特許調査についての概要を述べる。更に、後発であっても勝てる自社出願について述べる。

 

<後発における特許調査の目的>

後発における特許調査の目的として、主に次の3つが挙げられる。

Ⅰ.先行他社の出願傾向の把握(特許情報の抽出)

Ⅱ.自社(予定の)技術・製品が先行他社の権利侵害調査(侵害予防調査)

Ⅲ.自社(予定の)技術・製品の先行他社登録特許の無効資料調査

調査着手の前に、先ずは、自社の事業計画・製品化の方向性等の明確化が必要である。そうでないと、調査の進捗で抽出される特許に対して、回避可能な(回避すべき)特許であるか、または、実施許諾が必要な特許であるか、更には、無効化すべき特許であるかの判断が困難となるためである。

上記3つについて、以下に述べる。

 

Ⅰ.先行他社の出願傾向の把握(特許情報の抽出)

先行する他社の特定は、営業情報等から、数社程度に絞られるのが通常である。仮に3社が先行他社とすると、各社毎に「出願人」での絞りこみ検索を行った後、「発明名」や「特許分類(IPC分類)」に注目して、関係する製品・技術分野での絞り込み検索を行う。

ここで、「出願人」である会社名の変更(合併や吸収を含む)により抽出されないことがある。旧社名も含めた検索が必要である。

(通常、権利が維持されている登録特許は、特許権者によって名義変更がされるが、権利化されなかった特許は、名義変更はなされない。)

続いて、先行各社における関係製品・技術に関する特許を抽出された後、以下の分析が有効である。

①出願件数の推移

②発明者(数)の推移

③もの・製造方法・製造設備に注目

④課題の推移

⑤各特許の重要度の推測

それぞれについて、以下に述べる。

(1)出願件数の推移

先行他社の1社(A社とする)の年度当たりの出願数の推移を知ることで、開発の着手時期や、出願件数が増加傾向であるのか、それともピークは過ぎて減少傾向であるかによって、A社における該当製品・技術の推進する姿勢を推し量ることができる。また、A社の全出願件数との比較することによって該当製品の社内での重要度も推定でできる。

(2)発明者(数)の推移

発明(公開公報)の内容と、発明者との関連を見ていくと、発明者Pは設計者、発明者Qは材料開発者、発明者Rはプロセス開発者、というような推測が可能となり、それぞれのキーパーソンが誰で、関連する他の発明者が何人いるか、つまり、出願の時期によって、開発の陣容が概ね想像できることが多い。更には、発明者の住所(事業所の住所)によって、研究所に所属している発明者がいるのか、どこに所在する事業所(工場)で開発・製造がなされているか、等も推測ができる。

但し、最近の傾向として、前記のような推測(特定)ができないようにするため、発明者の住所を会社本社の住所に統一する出願人も多くなっているに感じる。

発明者数と前記出願件数の関係に注目することで、単に所属する発明者(技術者)の数が増えて件数が増えているのか、それとも出願の重点化によって、増えているのか等の情報も得られる。

(3)特許の種類

特許は、もの、製造方法、方法、の3種類があるが、最も顕現性が高い(権利範囲の外延が明確、曖昧さが少ない)製品の構成要件による「もの」の特許の出願が優先される傾向がある。

他方、方法特許はその権利範囲が狭いこともあって、出願は少ないと感じる。方法であっても、製造の一工程とすることによって、製造方法特許としての出願がなされることが多い。

製造方法の特許では、(その製造方法によって製造された「もの」も権利範囲に含まれるものであるが、)明細書中に製造条件などを少なくとも、「もの」の特許以上に「実施可能要件」を開示する必要があって、発明が完成した時点で即出願することは少なく、社内での議論によって、出願せずに秘匿することを含めて、出願内容(どこまで開示するか)や出願時期を検討されることが多いのではなかろうか。

つまり、製造方法特許が出願される段階では、後発が先に出願することによって障害となる特許が成立(登録)されることへの対策として適時出願されていると考えるべきであろう。

また、「もの」ではあるが製造装置についても、製造方法と類似の扱いがされることが多い。

従って、特許が「もの」「製造方法」「製造設備」いずれに属してして、その件数や割合の推移を把握することは有用と考えられる。

(4)課題の推移

明細書中に記載されている課題は、設計に関するもの、製造や品質に関するもの、等によって、異なるが、それぞれについて、開発の進捗や、顧客のニーズの変化によって、推移していくものである。

また、先行各社によって、課題の捉え方は異なることが多く、各社の出願の特徴の把握することができる。

(5)各特許の重要度の推測

先行他社の出願特許の内、以下の情報を注目することで、それぞれの特許の重要度を推し量ることができる。

①審査請求時期

審査請求期限は、出願から3年であるが、重要と考える特許、権利化を急ぎたい特許では、出願後、比較的早く審査請求される傾向がある。

②優先権主張による外国特許出願の状況

外国出願は権利化までの費用が多額となり、また、その権利の維持年金も高いため、外国出願される特許は、比較的重要な特許であると解釈できる。

外国出願での出願国として、一般に、市場がある国(輸出先)、自社製造拠点(予定)がある国(製造国)、有力な競合が存在する国、とすることが多い。但し、最近はPCT出願が多いため、実際の出願国(国内移行国という)が明らかになるのは、優先日から30か月程後となってしまうが、先行他社の外国事業の方向性を把握することができる。(尚、ヨーロッパの場合は、欧州特許庁で特許査定後に移行国を選定するため更に時間を要する。)

③拒絶査定不服審判請求時の分割出願の状況

特許庁の審査の結果、拒絶理由通知を受けた後、特許請求の範囲を減縮した(狭めた)手続き補正書(及び意見書)を提出しても審査官の心証が覆らない場合、拒絶査定となるが、どうしても権利化したい場合は、「拒絶査定不服審判」請求を行うことができる。しかし、この審判で拒絶されると後がなくなる(あきらめるしかない)ため、前記拒絶査定不服審判請求と同時に、新たに分割出願することで権利化のチャンスを維持することができる。

つまり、このような状況に至っている特許は重要特許と考えられる。

 

以上述べた通り、先行他社の出願~審判の状況や記載の内容を詳細に把握することで、その出願さている製品・技術の方向性や重要性を知ることでき、また、開発陣容の推移などを推測ができることが多い。

新製品QCD(17)【電子部品のクリーン環境⑥クリーン化の推進<作業者への教育>】

クリーンルームでの経験の無い作業者にとっては、作業服=ユニホームが変わっただけ、の認識があることが多い。

できれば、配属されてきた際の導入教育で、開発当初の塵埃や異物混入による不良品例を示して、ユニホームが変わっただけではなくて、このようなクリーンウェア及びクリーンルーム(ブース)での作業によって、これらが原因となる不良を抑制することができる、ことをレクチャーすることが肝心である。

また、前述したようにクリーンウェアの着用とクリーンルーム(ブース)での作業だけで、不良品の発生を抑制できるのではなくて、塵埃・異物を「持ち込む犯人」は、作業者自身であることが多く、自らの頭髪、眉毛、そして、クリーンウェアの下の衣服からの毛羽などが起因となっている、という現実を知ってもらい、実感して、実践してもらうことが重要である。

 

以上、私の新規電子部品を開発から量産化した経験に基づいて、クリーン環境に注目して述べてきました。

新製品QCD(16)【電子部品のクリーン環境⑤クリーン化の推進<クリーンブースからクリーンルームへの移行>】

幸いにも生産量(受注量)の増加、または、類似製品が増えると、対象となる工程全てをクリーンルームで行うこととなる。

 

〇全く異なるエアの流れへの対応

実体顕微鏡レベルで検知可能な塵埃・異物の抑制であれば、クリーンルームの仕様として、HEPAフィルタを備えて、正圧を確保するため、ルーム外部からエアを導入する機能を備えたパッケージエアコンで実現できる。

つまり、それぞれのクリーンブースではエアの流れが同様であったことに対して、エア流量(風速)や方向が全く異なる場所での生産となる。

従って、前記エアの流量と方向を考慮して、作業場所や設備のレイアウトの「再」適正化を行う必要がある。特に、パッケージエアコンからのエア吹き出し量が大きくなる(風速が速い)ので、その上下左右方向含めて吹き出す方向の検討が必要である。

更にパッケージエアコンの近傍の風速は比較的速くなるため、近傍の設備においては、風速の弊害が出ないようにする工夫を要する。

 

〇温度・湿度の制御

パッケージエアコンによるクリーンルームに移行することで、室温や湿度の制御が容易となる。

湿度制御は、温度のみ制御できるパッケージエアコンに比べて高額であるが、

年間を通して、品質を安定した生産を行うには、湿度制御可能な仕様にすべきである。

 

〇減産への対応

電子部品製造において、急激な減産要求(生産調整)を一定頻度で経験することが多いように感じる。

これに備えて、複数あるラインの一部を停止させる場合、フレキシブルに空間を分けて、その停止ラインに応じたパッケージエアコンも止めることが可能なレイアウト設計が好ましいと考える。