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新製品QCD(15)【電子部品のクリーン環境④クリーン化の推進<クリーン度の評価方法・管理方法>】

〇評価方法

一般に、パーティクルカウンターでの数値化は容易であるが、実際の電子部品での製造現場では、クリーンブース・クリーンルームとして機能しているかの確認程度と考えて良い。

より現実的な評価について述べる。例えば、ある設備上や作業机の端部に、清浄な表面を暴露した状態で、スライドガラスやシャーレを設置し、一定期間、通常の作業を行なった後、実顕微鏡で観察すると、想像以上の塵埃や異物を確認することができる。その形態や、単位面積当たりの数を評価することが有用である。更に、塵埃や異物を、SEM/EDSで、観察・分析することで、形態や組成によって、その発生源を特定することもできる。

パーティクルカウンターでの数値よりも、製品不良に至る可能性のある塵埃・異物を特定して、その発生を抑制することが可能となる。また、既に述べたように、塵埃等が、実際の製品構成物にたどり着けないような工夫、製品構成物の保管方法の適正化、ハンドリング方法の適正化、近傍のエアの流れに基づいた作業者と製品構成物との相対位置の適正化等を検討すると良い。

 

〇管理方法

上記評価方法に基づいて、一定期間ごと継続的に評価することで、改善すべき作業やレイアウトが特定可能となる。

また、クリーンブースを間欠運転している場合、その影響を評価し、運転プロファイルの適正化を図ることができる。

新製品QCD(14)【電子部品のクリーン環境③クリーン化の推進<クリーンブースの導入>】

〇導入工程の優先順位の決定

クリーン化が比較的重要な工程・作業を決定する。ここでは、担当の技術者や作業者によって、塵埃・異物が混入すると、どういった不具合が生じるかを議論して、合意の上で、優先順位を決めていくことが望ましい。

(このような現場を含めた議論は、小集団活動での品質向上などへの展開が容易となる。)

例えば、セラミック積層電子部品であれば、シート成形前のスラリーに異物が混入すると、そのまま製品内部に留まってしまい焼成後に異なる色調を呈する、のような議論を進める。

議論の結果、以下3工程が最も高い優先順位の工程との結論に達したとする。

・セラミックスラリー作製工程

・セラミックシート成形工程

・スクリーン印刷工程

それぞれの設備と作業スペースにクリーンブースで覆うことになるが、一般にクリーンブースは、天井中央部にエアの吹き出し口があって、また、ブースの周囲四方を覆うカーテン状の透明シートの下部の隙間からエアが排出される構造となっている。つまり、(何も障害物が無ければ)ブース天井中央から周囲下部の隙間に、エアが流れている=風が吹いている構造となっている。

上記のエアの流れを考慮して、作業者の位置・設備のレイアウトなどを適正化することが必要である。動きがある作業者の頭部からの毛髪が、エアの流れによって、製品構成物となるスラリーやシートに落下、付着することがないような作業内容やレイアウトを検討する必要がある。

 

〇生産設備での工夫

エアの流れを検討すると、生産設備への工夫も有効であって、適時適用していくことが良い。以下に例示する。

・シート成形機の乾燥前のスラリーで暴露されるところは、上部の近傍に透明樹脂板等で、塵埃が落下を抑制する。

・スクリーン印刷機でも、被印刷物のシートや、ペーストに、塵埃が落下しないように同様に透明樹脂板を適宜設ける。

 

〇運転と運用

原則は、クリーンブースは、連続運転を行うべきである。しかしながら、現実問題として電気代等を考慮すると、作業時の前、例えば1時間前から運転を開始し、作業前の設備の清掃、作業場の清掃、などをやるべき準備事項を決定して、必ず実行する、作業記録をつける、等が実際的である。

 

〇クリーンウェア・クリーンブーツ

クリーンブース内での作業はクリーンウェアで行うことを徹底する。また、当然であるがクリーンウェアの保管場所もクリーンブース内である。

(1)クリーンウェア等の仕様

足、上下のつなぎ、頭部まで、一体の仕様が望ましい。また、静電気対策された仕様が良い。

クリーンブーツは、作業でアルコール等有機溶媒を扱う場合は、それに適したものを選択する。重量物落下の可能性があれば、安全靴の仕様を選ぶ。

(2)クリーンフェアの洗濯(クリーニング)

新規に洗濯機を購入して、クリーンウェア専用に使うことも可能であるが、洗濯による生地の痛みや、クリーンな乾燥場所の確保等、検討すべき事案が発生する。

従って、クリーンウェア洗濯の実績のある専門業者に依頼することが望ましい。

クリーニングの頻度であるが、各工程での作業内容に応じて、洗濯(交換)頻度を決めて運用すると良い。

 

〇クリーンブース内部のクリーン度向上

クリーンブース導入の当初からの実施でやるべきことは、「段ボールの排除」と「クッション等備える(塵埃が多く発生する)椅子の撤去」である。

次が、指示書や記録での「紙」の排除である。指示書等はラミネートや、チャック付きポリ袋に入れての運用とすべきである。記録で紙が必要ならば、「クリーンルーム仕様」で「ボールペン」を徹底する。

シャープペンシル含めて鉛筆は、芯の材質も塵埃であるが、それよりも「折れた芯」の混入がより問題となる。

新製品QCD(13)【電子部品のクリーン環境②クリーン化の推進<クリーンブース導入前>】

クリーン化の本質を理解した上で、以下の手順で推進することが現実的と考える。 いきなりクリーン環境が必要な工程全てをクリーンルームで行うことは稀のケースと思われ、必要最小限な工程をクリーンブースで行うことが一般的と考える。

<クリーンブース導入前>

〇従来製品工場との差別化

電子部品等を生産した経験のない工場では、工場建屋内と外で、いずれも土足であるところも多いのではなかろうか。

・先ずは、工場建屋内に入ったところで、室内履きに履き替える仕組みとする。「電子部品製造工場にて土足厳禁」の表示も有効である。

・室内履きは、できれば塵埃が発生しにくく、汚れが目立つ白色系を採用する。(クリーンルーム仕様でなくてもOK。)

・床面塗装を、塵埃フリー仕様に変更して塗装する。

・従来からのエアコンのフィルタ等、できれば内部を清掃する。

上記について、次の段階として、工程の一部にクリーンブースを導入することになるが、クリーンブースの吸気口から周囲の空気を入れ込むため、周囲の空気が清浄であればあるほど、吸気口のフィルタの交換頻度等を減らすことができて有効である。

 

〇エア・窒素の供給配管のフィルタ設置等

塵埃や異物の無いエアや窒素が供給されるように、少なくとも供給口の直前に必要なフィルタ等を設置する。

更に、できれば後述するように、エアについては、塵埃とは関係無いが、製品の品質安定・維持のため、露点管理されたエアを供給できるようにする。

 

〇クリーンブースを想定した工程・スペースの差別化

当初からクリーンブースを複数台揃えて生産を開始することは、実際はコストとタイミングの問題で困難なことが多い。近い将来、クリーンブース導入されることを想定して、導電性有機フィルム(シート)で、工程・設備及びスペースに覆い囲みを設けて、スポットクーラー等で、囲みの中にできるだけ塵埃の少ない空気を送り込んで、内部が正圧(プラス圧力)になるような空間を設ける。

このスペースでは、クリーンウェア・クリーンシューズを着用して作業する。クリーンウェア等は、スペース内に置き場所を設定する。

新製品QCD(12)【電子部品のクリーン環境①クリーン環境必要性の本質の理解】

クリーン環境について、少し述べてきましたが、現場レベル含めて、記していきます。

 

セラミック電子部品では、部品の内部に配線等が存在するため、塵埃や異物によって配線に欠陥を生じさせ、その結果、製品の特性劣化に至る。その対策として、クリーン環境での生産が必要となるが、費用対効果を考慮し、塵埃等が起因の不良品発生の抑制を目指した実践的なクリーン化についての考え方を述べる。

 

〇「形」からの導入の限界

携帯電話用のセラミック積層部品に新規参入し、顧客への製品生産を開始した。「文献等の情報に基づいて」セラミックシート成形工程やスクリーン印刷工程等、クリーン環境が必要とされる工程にはクリーンブースを導入して、作業者にはクリーンウェアを着用させて生産を開始した。しかしながら、最終検査にて、内部配線の断線と思われる不良が、ある一定頻度で発生していた。断線不良品を断面研磨などによって、その断線箇所を特定したところ、同じロットでの不良品は、全て同様の箇所での断線であること判明した。更に、X線透視装置で観察した結果、断線の形態も同様であることが判明した。結論として、スクリーン印刷時に、被印刷体のセラミックグリーンシート上に、髪の毛等の細長い異物が付着し、最初の印刷で、印刷スクリーンのシート接触面の印刷パターン部分に異物が張り付き、印刷スクリーンの導電パターンの一部をマスキングする作用によって、同一の箇所での断線が発生していたと推測できた。

上記の経験で得た教訓は、通常の環境よりクリーンな環境での作業という「形」で入るのでは無くて、不良品・不具合品を発生させないために、クリーンな環境が必要であって、塵埃や異物による不良品の抑制のためには、与えられたクリーン環境下での作業を行うだけでは不十分であるということであった。

 

〇クリーン化の本質(目的)

以上述べた通り、クリーン化の本質=目的は、クリーンルームやクリーンウェアを導入適用することではなくて、塵埃等による製品不良の低減・抑制である。従って、製造工程に、塵埃や異物をできるだけ持ち込まないようにして、直接、製品への影響を無くする、少なくとも低減できるかということである。

当然ながら、クリーンルームやクリーンブース等、クリーン環境を構築し、維持するには新たなコストが発生する。費用対効果を常に意識しながら環境を整備し、推進していく必要がある。更には、生産量の増減(変動)に対処できるようなシステムを目指すことが望ましい。

より具体的には、「楽観的な将来の生産量を前提に、」必要と思われる工程・設備、作業スペースをクリーンルーム仕様になるように従来工場の一部を改築・改造すると、その初期投資、及び常にルーム内の正圧(空気が部屋から外に流れる)を維持するエアコンの導入費用や運転費用は相当の金額となる。将来有望な新製品であっても、順調に立ち上がる見込みは決して高くはなく、前記費用の負担は事業の継続に大きく影響する。

IoT事例紹介、デバイス利活用事例

本日、IVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ)

https://iv-i.org/wp/ja/

の技術統括 古賀康孝 講師によるリモートでのセミナーを受けました。

講師より、

「ZOOM+miro」(ホワイトボード)でのリモートスカッション、

「KNIME」の普及、

IoT関連部品の低価格化、

「エッジ」の高機能・高性能化により、クラウドに上げる必要性が低くなった、

などのお話を伺いました。

また、

IVI公開シンポジウムで2020-spring-での最優秀賞など受賞事例の紹介いただき、大変興味深かったです。

興味があれば、以下参照下さい。

最優秀賞

マツダ他

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/03/symposium2020-spring_34.pdf

優秀賞

三菱電機他

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/03/symposium2020-spring_14.pdf

CKD他

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/03/symposium2020-spring_43.pdf

 

地域(中小企業)

最優秀賞

藤工業

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/03/symposium2020-spring_50.pdf

優秀賞

広機工

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/06/regional_seminar_debriefing_meeting-hiroshima01.pdf

オーザック

https://iv-i.org/wp/wp-content/uploads/2020/06/regional_seminar_debriefing_meeting-hiroshima02.pdf

新製品QCD(11)【顧客によるSystem Audit(システム監査)】

System Auditでは、新製品開発での手順(DR:デザイン・レビューの内容、頻度など含めて)、受注から納品Dまでの流れ、など、仕組み・システムについての監査が行われていました。

ここでは、プロセス技術に関係するところを紹介します・

 

1つ目は、今では、「BCP(事業継続計画)」と言えば一般的になってきましたが、90年代の後半に既にフィンランドN社からは具体的に要求されていました。

当時の印象は、「そこまでやるか~!」でしたが。。。

つまり、

1)生産現場で地震が発生して、生産・納品Dが困難となった場合、どうやって顧客に連絡するか。

2)受注等のデータセンターのバックアップ手段の計画。

3)事業再開のための手順。

より細かくは、

4)外部から購入品について、代替品の検討計画。

(サプライヤー(部品メーカ)のサプライヤーから供給不可となった場合に備えての、代替計画。)

そして、最も困難な項目と思われたのは、

5)製造拠点の複数化(離れた場所に、もう一つ工場をつくる)計画。

等々、実際は多項目にわたっての要求でした。

 

これらについて、回答書を提出しました。

しかしながら、4)5)は、現実的には検討は進みませんでした。

さすがに、5)は「事業者の判断する項目」であるが、提出してくれ、のような感じでしたが。

 

2つ目は、文書管理です。

これも、今では、紙の文書だけでなくて、データベース上の電子ファイルのアクセス管理は一般的になったたように思いますが、

当時から、顧客との文書、製造に係る文書の管理について、

「原則施錠したキャビネット」を使用、

また、上記BCPとも関係しますが、コピーを「離れた場所」(例えば東京本社の営業部)に保管、

する等、「危機管理・リスク管理」についても、当時としては先進と思われる指導をいただきました。

 

後年に一般化する概念は、

それぞれの時代で先頭を走っている事業者によって、最初に提案され、段々と広がっていくものと、

認識しています。

 

文頭のDRについても、最初に聞いたのは、80年代後半IBMが大型コンピュータ事業で成功し、更に日本メーカ3社?がIBMコンパチ路線で、同様に事業を拡張していた時期に、たままた親会社の関連部署に実習する機会に恵まれて、そこでデザイン・レビュー(DR)という言葉・概念を初めて知りました。

新製品QCD(10)【顧客によるProcess Audit(プロセス監査)】

お客様への納入実績もある程度できて、継続的な生産が見込めるようになると、顧客からAuditを受けることとなります。

Auditには、新製品開発の手順、営業(受注)、調達、発送等のシステムに関するものと、製造プロセスに関するもの、の2つに分かれていて、顧客からみて、「問題の無いサプライヤー」であるかどうか、判断されます。

判断と言っても、今後取引はダメということでは無くて、Auditの後、

1)この点は改善して欲しい、

2)将来的に、このような取り組みをして欲しい、

というような、報告書が届いて、それぞれに計画を提出するような形でした。

実際は、現場でのAuditの後の打ち合わせで、顧客の要望や意向は察しがつくものでしたが。

 

先ずは、対応での主担当であったProcess Auditについて記します。

既にISO9001は認証取得済でしたが、顧客のAuditでは、より具体的、現場的でした。

・漢字が分かる中国人と、本国からの欧州人が現場に工程の順に立ち入る。

・現場に配布されている作業標準書や手順書が、原本と異なっていない「最新版管理」できているか確認する。

(中国人が、いくつかの工程での手順書を見て、発行年月日をメモっていて、後の打ち合わせで原本と違いが無いかを確認。)

・また、手順書等は、現場の作業者が机や棚まで、数歩歩いて、「探す」レベルではダメで、歩きは一歩以内で、パッと取り出せるレベルを要求されました。

・補助材料等で「先入れ先出し」が徹底される仕組みとなっているか。

(当初は製造年月で確認する(古い方から使用する)ことにしていたが、入荷後シリアル番号を記した後、小さい数字から使う、ことに改善して、納得いただいた。)

のような感じで、結構「微に入り細に入り」の指摘、指導でした。

しかしながら、当時の携帯電話をリードしている世界的メーカからの指摘は、「納得感のある」ものでした。

 

顧客は顧客で、様々なサプライヤーへのAuditによって、各社の良いところ、弱いところを学習して、

良いところを、他のサプライヤーに指導して、全てのサプライヤーの高度化、均質化を進めていたのであろう、と想像します。

 

ちょっと余談となりますが、スウェーデンに本社があったE社の担当者数名についての思い出です。

スウェーデン人は、一般に、「大きい」人が多いようで、「クリーンルーム」見学用に、用意したクリーンウェアのサイズは初めて購入した「4L」、

当然、身長も高かったので、工程の説明で首が痛くなりました。その時点ではクリーンウェア着用の経験が少なったようで、記念撮影を求められました。

新製品QCD(9)【新製品増産時への対応⑥<工法の大変更③>】

前回まで、「誰もが経験する?工法の大変更」の2例について述べてきました。今回は、工法の原理は変えていないので、大変更とは言えないかも、ですが、原理以外は、相当変化した工法ということで、一応3例目として、記します。

 

それは、圧着工程です。

穴明け、印刷を経たシートは、圧着金型内に、積層方向(積み重ねる方向)で位置ずれしないように、打ち抜きされて、所望とする積層数となった後、100℃程度の温度に加熱されて、上下方向に(実際は、上方向から)圧力がかかって(プレスして)、積層方向に隣接するシートが、熱圧着されます。温度によって、より変形しやすくなったシートとシートの界面で、表面近傍の樹脂が互いに接着する原理と理解しています。

熱圧着直後は、圧着した積層体は、脆くて、すぐにハンドリングできないため、ほぼ室温まで冷却した後、金型から積層体を取り出します。

 

実際の生産となると、主に、

1)1つの金型セットに1つの積層体となると処理量が制限される、

2)金型を加熱して、プレス後、冷却する時間が長時間となる、

の主要因によって、生産量を増加できない状態となっていました。

 

いろいろと、調査、検討したところ、

「金型内に積層体を収めて、熱圧着する」という基本原理はそのままなのですが、

<温水のCIP(Cold Isostatic Press冷間等方圧プレス)>

を導入することで、

1)バッチ処理ですが、CIPの加圧層内に金型の多数個処理、

2)金型全体に等方的に圧力がかかるので、金型を薄型軽量品への変更、

3)常に加温されたCIP加圧槽に、金型を出し入れするために、加熱・冷却時間を劇的に短縮、

とすることができ、生産量の大幅アップを達成できました。

 

設備導入に際して、圧着の温度を90℃であれば、水(湯)を使用できるのですが、100℃以上では、シリコンオイルが圧力媒体となるため、作業性で雲泥の違いがあることが明白でした。

そこで、それまでの条件120℃の温度を90℃に低温化しても、圧着で問題無いようにする検討が必要でした。

他に、金型含めて真空パックすることや、実際の金型形状の最適化、など、検討が必要でした。

 

この工程変更も、顧客の数量要求+QCDへの対応のため必要であったことは明らかでした。

新製品QCD(8)【新製品増産時への対応⑤<工法の大変更②>】

今回は「誰もが経験する?工法の大変更」の2例目として、穴明け工法を、従来からのパンチ・ダイ(金型)方式から、レーザー方式への変更について述べます。

 

この2例目は、1例目と関連があります。

つまり、従来のSUS枠方式では、穴明けはシートのみを貫通させれば良かったのですが、シートとキャリアフィルムを一体としてハンドリングするということは、シートだけは無くて、より強度が大きいキャリフィルムも穴明けする必要が生じました。

このため、パンチとダイでの打ち抜きは、パンチとダイ(金型)への負担が増大し、金型の交換やメンテの頻度、工数が激増しました。

キャリアフィルムの材質はPETでしたが、樹脂に「粘り」があって、「切れ良く」打ち抜く条件がシートのみに比べると、狭い管理範囲であって、管理工数、メンテ工数が増加する主な理由でした。

結局、メンテ等が追い付かず、穴明けが不十分となって、不具合が発生することも頻発しました。

 

そのような状況の中で、セラミックグリーンシートの穴明けに、CO2レーザーが使える(普及しつつある)との情報を得て、レーザー装置メーカの選定含めて検討を進めて、その結果、少なくともシートの穴部分は十分に除去(貫通)できる(他方、キャリアフィルムは完全な除去(貫通)は不要。)ことが実証できて、工法を変更して、工程に導入しました。CO2レーザーは、それなりに新たな管理項目が必要でしたが、それまでのパンチとダイに比べると、メンテ工数が激減し、処理能力も大幅アップして、新工法の実力に驚きました。

新製品QCD(7)【新製品増産時への対応④<工法の大変更①>】

今回も3次以降の投資で経験することが多いと推測します。

「誰もが経験する?工法の大変更」について記します。

 

新製品QCD(1)と(2)で、新製品の工程は、「失敗」を避けるために、実績のある設備や材料でスタートすべきと述べました。当然のことですが、「工法」についても同様に実績ある工法を採用します。

 

しかしながら、3次以降の投資を行うフェーズとなると、各工程のリードタイム等が把握できてくるため、「この工程は、今後の増産において、n倍化等では、到底、リードタイム、コスト、等が合わなくなる。」と感じる工程を認識するようになります。

 

私が経験した2例について記します。

1例目は、ステンレス製の枠(SUS枠)での位置合わせから、SUS枠無しへの変更です。

セラミック積層部品は、セラミックグリーンシートを成形後、グリーンシートに、穴明け(ビアホールまたはスルーホール形成)した後、所望とする内部電極パターンをスクリーン印刷することで、セラミックス内部に、3次元の配線構造が可能となるのですが、シートに対して、穴明けの位置、印刷の位置を再現性良く「合わせる」ことが必要です。積層時も積層方向に隣接するシートの位置を「合わせる」ことが必要です。

 

このため、シート成形後、キャリアフィルム(PETフィルム)からシートのみを剥離して、ステンレス製の枠(SUS枠)に糊付けして、ハンドリングをしていました。SUS枠を位置合わせの基準として、穴明け、印刷を行い、積層時に、位置ずれしないようにSUS枠から外されて(打ち抜かれて)、圧着され、積層体として一体化されます。

 

このSUS枠は、ハンドリングされるために、ある程度の機械的強度、繰り返し耐久性、などが必要のため、シートの十倍以上の重さがありました。

また、積層時にシートがSUS枠から外された後、枠に糊付けされたシート残部の除去、洗浄などの工数が必要でした。手作業での限界によって、ある時期から「SUS枠洗浄装置」も導入していました。

増産するに伴って、SUS枠であふれる、状態となっていました。

 

SUS枠の「窓」の大きさによって、製品となる面積が決まるため、更に増産するためには、この「窓の面積」を大きくする必要あります。

種々検討した結果、縦横共に2倍にして、面積4倍化を進めることになりました。

 

SUS枠での面積4倍化を「味見試作・実験」したところ、その<重さ>、そして、SUS枠からシートを打ち抜く際に必要な<力>の感触によって、これでは実用化できない、との結論に至りました。

従来より「でかくて重い」SUS枠が工場にあふれることも想像できるものではありませんでした。

現場から理解も得られないことは明白でした。

 

結局、採用した工法は、

シートをキャリアフィルムから剥離することなく、「シートとキャリアフィルム一体」の状態で、積層工程まで、ハンドリングする工法でした。

穴明け工程で、全てのシートに位置合わせ用の穴を空けて、その穴を基準に、後工程である印刷などを行う、こととなりました。

文章で書くと、さらっと数行となりますが、この大変更に伴う種々検討事項は相当量ありました。

しかし、何とか、当初の面積4倍化を達成し、増産可能となりました。

 

次回は、穴明け工法を、従来からのパンチダイ方式から、レーザー方式への変更について述べます。